2011-01-03

BBC News - North Korea bends it like Beckham in UK film first

昨年末の12月26日、北朝鮮が初めて西側の映画をテレビ放映しました。
その映画というのが、私の大好きな「Bend It Like Beckham(ベッカムに恋して)」だというのです。
放映中には「英国との国交樹立10周年を記念しての放映である」との字幕が流されました。
英国政府が推進したイベントだったそうです。

「ベッカムに恋して」を選んで北朝鮮に放映を勧めるあたりに、英国外交の小憎らしいほどの巧みさを感じます。
スポーツ、とりわけ国技ともいうべきフットボール(サッカー)がテーマですから、北朝鮮といえども「まあ、いいか」となることを見越しての「ベッカムに恋して」なのでしょう。
しかも、この映画は2004年の「平壌映画祭」で音楽賞を受賞しているのです。そのあたりもしっかり計算済みのようです。

ところが、この楽しい映画が内包するメッセージは深くて強いものです。
フットボールを愛してやまないインド系の女の子が(主演のパーミンダ・ナーグラがすてきです)、人種や性、宗教や因習などの差別や抑圧とぶつかりながら「ベッカムのように美しい弧を描くキックを蹴りたい」とピッチ内外で闘い続ける。
二重、三重の抑圧のもとで生きざるを得ないマイノリティーの若い女性にとっての闘いは「フットボールへの愛」という形をとってはいるけれど、自由と人権という観点からすると、相当に示唆的です。
したたかな英国政府がこの示唆性を意識していないはずはありません。

その意味からすると、地上最強の人権抑圧国家がよく上映を許容したものだな、と思います。
北朝鮮政府にしてみれば、テレビを所有し、しかもこの手の映画を眺めるような連中は、人権抑圧体制から利益供与を受けている連中ばかりだから問題はない。
そんなふうに高を括っているのでしょうか。
それとも、延坪島砲撃事件以来の緊張する朝鮮半島情勢に対して、今度は宥和的なメッセージを発するというマッチポンプ的な外交戦術の一環として、「ベッカムに恋して」放映を位置づけているのかもしれません(BBC News - North Korea calls for dialogue in new year message)。
北朝鮮はここでも「謎の国」のままです。

記事によれば、112分のオリジナル版が104分にカットされたとあります。
さすがに国民には見せられないシーンなのかもしれません。
ともあれ、どの部分がカットされたのか、興味深いですね。